カーエアコンがトラブルを起こして、冷房や暖房があまり効かないとき、どう対応したらよいのか分からない方が多いと思います。とくに夏場は車内が高温になりやすく、命に関わる場合もあります。
カーエアコンの修理費用の相場や、修理する場所はどこがよいのでしょうか。今回は、カーエアコンの仕組みや、故障していると考えられる症状、故障したときにできる対処方法、ひとりでもできる故障の確認方法や修理費用、修理場所の違いについて解説します。
カーエアコンの仕組みは、冷房と暖房でまったく違います。それぞれの仕組みを知っていれば、どこが故障しているのか理解しやすいので、まずは冷房と暖房の両方の仕組みについて解説します。
車の冷房の仕組みは、一般的な家庭用エアコンと同じ原理を使っています。液体が蒸発するときに熱を奪う、気化熱冷却という原理を利用しています。
病院でアルコール消毒されるときに、ヒヤッとした覚えがありませんか?アルコールは、液体から気体へ気化するときに熱を奪うため、冷たく感じます。車の冷房を出す原理もこれと同じ、気化熱冷却と呼ばれるものを使っています。
常温で気体であるエアコンガスを、まずはコンプレッサー(空気圧縮機)を使って液体にします。これを循環させ、車内の空気で温めると、気体になるときの気化熱で周りの空気が冷えます。冷房は、この冷えた冷気を出しているのです。
ちなみに、冷房を入れるとガソリンが早くなくなるのは、コンプレッサーがエンジンを使って動くからです。
車の暖房の仕組みは、エンジンが燃えるときに発生するエンジン熱を使って、暖かい空気を送り出しています。家の暖房機能の仕組みとは、まったく別物です。
エンジンをかけると熱をもちますが、熱くなりすぎるとオーバーヒートするので、冷やさなくてはなりません。このときに冷却水(クーラント)を使って冷やしています。
すると冷却水の温度が上昇しますが、これに風を当てることで温かい空気が発生し、暖房として車内に送り出しています。
暖房をかけてもかけなくてもエンジンを冷やすのに冷却水を使うので、暖房を使ったからといってガソリンは消費しません。ただし、A/Cボタンをつけるとコンプレッサーが働き、ガソリンが消費されるので注意してください。
冷房や暖房をつけても不調なとき、故障を考えると思います。ここでは、カーエアコンの症状ごとに、何が原因でトラブルが起きていそうか解説します。
冷房を入れてもなかなか車内が冷えないことがあります。A/Cボタンが押してあることを確認し、もう一度冷房をつけなおしてみましょう。冷たい風が出ない場合には、カーエアコンにトラブルが発生しているかもしれません。
寒い日に暖房をつけても車内が暖かくならないことがあります。何回つけ直してみても風がくるだけで、暖かくならないときは、エンジンを冷やすための冷却水不足が考えられます。
エンジンを冷やす際に、冷却水はエンジンに熱を奪われて暖かくなります。これに風をあてると暖かい空気になり、これを暖房として使っています。水が少なければ、暖かくなっても充分な量にはならず、冷えた空気が送り出されてしまいます。
冷房をつけても暖房をつけても風が吹かないときがあります。これは、風を送り出すファンモーターにトラブルが発生したか、またはフィルターの汚れのせいで風が出てこないことが考えられます。
ほかの部品と同じように、ファンモーターには寿命があります。フィルターもカビやホコリがついて風が出にくくなるため、約1年ごとに取り替えてください。
冷房や暖房をつけて変な音がする場合は、エアコンそのものの部品に不具合がある可能性が高いです。おかしな音の種類によって、ある程度どの部位が悪いのか予想がつきますが、専門家に見せるのが一番安心で確実でしょう。
冷房や暖房をつけると、不快なにおいがすることがあります。その主な原因はカビです。エアコン内部にある、冷たい風を作るエバポレーターという部品にカビが発生しやすいです。
まわりに水滴がつきやすくなっており、じめじめしているのでカビが生えやすいですし、ホコリやカビなどが混じった汚れた空気も送られてくるため、よりカビが繁殖しやすい環境です。
不快なにおいがしたまま放置してしまうと、カビを吸いこみ続けることになります。体にも悪いですし、ぜんそくやアレルギーになる可能性もあるので、早めに専門家に相談してください。
カーエアコンにトラブルが起きたと思っても、本当に壊れているのか判断がつかず、迷うこともあるでしょう。ここでは、本当に使えなくなってしまったのか、自分で確かめる方法について解説します。
カーエアコンが使えなくなってしまったのかどうかを確かめるのに、A/Cボタンがついているか見てみてください。A/CとはAir/Compressorの略称で、コンプレッサーをコントロールするときに使います。
A/Cボタンをつけるとコンプレッサーが動くので、冷房が使えます。A/Cボタンがoffの状態では、コンプレッサーが働かないため、冷房が使えず、送風しかできません。
A/Cボタンをつけてみて、冷房が使えれば大丈夫です。また、暖房ではコンプレッサーを使わないので、onでもoffでも関係なく使えます。冷房がきかないときには、まずはA/Cボタンがonになっているかチェックしてください。
車には、外気導入と内気循環という2つのモードがあります。基本的に、車は外気導入モードで設定されていることが多いです。外の空気が車の中に入ってくるモードなので、空調が適温にはなりにくいです。
内気循環のボタンを押して内気循環モードにすると、外の空気が車内に入ってこず、車の中の空気だけを循環させるモードになります。このため、効率よく車内の空調が管理できます。冷房や暖房が効きにくいと思った場合には、内気循環モードに設定してみてください。
カーエアコンがトラブルをおこしてしまったときに、どのように緊急で対応したらよいのでしょうか。冷房や暖房はどの季節でも使うので、急に使えなくなったら非常に困り果ててしまいます。
とくに暑い場合や寒い場合には、車内を適温にしないと体調を崩すだけでなく、最悪の場合は命に関わってしまうこともあります。ここでは、トラブルがおきた場合でもすぐに自分でできる対応方法について紹介します。
暑いときには、まず窓を開けてください。車内の暑い空気を外に出すようにするのがポイントです。車を走らせていると、とくに風が車の中に入ってきて、車の中が冷やされてすっきりします。
窓は1か所だけ開けるのではなく、風通しをよくするために2か所以上開けるようにしてください。運転席、または助手席のどちらかの窓を10cmぐらい、それと対角の後部座席の窓を同じぐらい開けましょう。対角線状に風を通すことで、より車内の熱気が外に出やすくなります。
外が暑いときは、直射日光によって車内の温度が上がりやすいため、車を日陰に移動させるのがおすすめです。とくに、車を止めるときに日光が当たると熱気がこもりやすいので、日に当たらないところで休憩してください。
大きな木やビルの日陰でもよいですし、立体駐車場で休むのもおすすめです。白色や薄い色の車であればまだましですが、とくに光を吸収しやすい黒色や、濃い青色などの車は暑くなりやすいので、できるだけ早く日陰に入ってください。
外が暑い日には、サンシェードを車に使いながら、体を保冷剤などで冷やすのがおすすめです。
サンシェードは、窓から車内に直接日光が入らないようにしてくれて、車内の温度上昇を防いでくれます。サンシェードは、冷房が効くときにも暑くならないように、駐停車する際に有効な方法です。
それでも暑く、体がほてってしまうような場合には、コンビニやスーパーで保冷剤を買って体を冷やすようにしてください。長時間暑いなかにいると、熱中症になってしまいます。
カーエアコンが使えないときには、コンデンサーに水をかけるのも効果的です。多くの車では、フロント部分の一番前にあります。ボンネットを開けた、一番前の部分にコンデンサーが取り付けられていることが多いでしょう。
このコンデンサーに水をかけて、できるだけ冷やしてみてください。水は水道水で問題ありません。お茶やジュースなどの液体は、車にとって害になるので使わないようにしてください。バンパーグリルの隙間から水を入れるのもおすすめです。
カーエアコンにトラブルが起きたとき、修理にどれぐらいお金がかかるのか不安を感じてしまうでしょう。ここでは、故障場所に応じた一般的な修理代金について説明します。
冷房が効かないときは、エアコンガスを補充すれば直ることがあります。その際の代金は約4,000円かかります。この場合はガスがなくなっているだけなので、ガスを入れればまたすぐに使うことができます。
部品が割れかけていてガスが漏れてしまっているケースでは、ガスをただ補充しても漏れてしまうので、部品を直さないといけません。そのような際には、約2〜3万円の修理費がかかります。ガスを補充するよりは高いですが、これでもまだ修理代のなかでは安い部類です。
コンプレッサーが使えないときには、新しいものに取り替えなくてはいけません。新しいものに取り替えるには、高い場合は約10万円請求されます。専門家でないとコンプレッサーが壊れているかどうかわかりにくいため、修理に出して初めて判明することが多い故障です。
かなり高くつくことになるので、十分に長年使っていて車体自体も古くなっていれば、新車に買いかえてもよいでしょう。
サーモスタットにトラブルがおきたときは、取り替えなければならなく、約1万円請求されます。サーモスタットが不具合をおこしていると、エンジンがオーバーヒートしてしまうこともあるので非常に危険です。
また、冷却水が不足していてもオーバーヒートしてしまうので、早めに修理に出すように心がけてください。
ファンモーターにトラブルがある場合には、約5万円請求されます。基本的に新しいものに付け替えなければいけません。このパターンでもかなり高くつくので、ファンモーターにトラブルがおきたときには、車を乗り換えようと考える方もいます。
カーエアコンにトラブルが起こっても、エアコンフィルターの交換だけで済むときには、2,000円から5,000円程度が一般的な修理代金です。
エアコンフィルターはホコリやカビが発生しやすいので、少なくとも1年に1度はチェックして、適時交換するように心がけましょう。
カーエアコンが使えなくなったと分かったとき、どこに車を持っていくべきか悩んでしまいませんか?修理費がかかってしまうなら、なるべく費用を抑えたいと考える方も多いでしょう。
カーエアコンの修理費は、依頼場所によって費用が大きく変わってくる場合もあります。ここで紹介する情報を参考に、比較検討するようにしてください。
カーエアコンにトラブルが発生した際には、多くの方がディーラーに直してくれるようお願いすると思います。
顔見知りで安心感がありますが、ほかの修理場所に比べて高額になることが多いです。これは、提携する修理工場などへ修理を依頼することも多いので、中間マージンが発生してしまうからです。
ただし、新車購入などの場合では保証期間が設定されていることがあり、保証期間内であれば費用がかなり安く直せるケースもあるので、一度相談してみてください。
カーエアコンが壊れたときに、整備工場に修理をお願いすると、比較的安く修理してくれることが多いです。修理の経験が豊富で、技術が確かな整備士がいることが多いので、安心感があります。
そのいっぽうで、直すのがあまりに難しいときには、そもそも対応できないケースもあります。また、修理部品がないために取り寄せの時間がかかる場合や、手間代が追加でかかってしまうこともあるでしょう。
カーエアコンなどの電子部品に専門的なのは、電装専門店です。こうした店に直接向かい、修理を依頼するのもひとつの方法です。技術力が確かな整備の専門家がいますし、中間マージンなども取られないので、費用が抑えられるというメリットがあります。
しかし、ディーラーからの修理依頼しか受け付けておらず、直接車を持っていっても修理
を受け付けてくれない場合があるので、事前の確認が必要です。
ガソリンスタンドでは、点検してもらって悪いところがあればその場で直して欲しいと頼めるのが便利です。給油する際に立ち寄りやすく、馴染みのお店だと顔見知りも多くて、安心感があります。
しかし、ガソリンスタンドは店によって信頼できる実力があるかどうか変わってきます。カーエアコンを専門にする整備士がいないこともあれば、部品が取り寄せになることが多いので、対応できないことや費用が高めになることがあり注意が必要です。
カー用品店に修理をお願いすると、費用を抑えられることが多いです。ただし、ガソリンスタンドの場合と同じように対応できる修理が限られますし、技術力や修理経験も店によって異なります。事前に調べて、口コミや評判がよいところを選ぶようにしてください。
カーエアコンには、冷房と暖房の2種類があります。それぞれの仕組みの違いを理解したうえで、トラブルを起こしたと思うシーンに分けて、どの部位が不調なのかを考えてみてください。
また、A/Cボタンのonや、内気循環にして、本当に壊れているのかどうか調べるのがよいでしょう。カーエアコンが不調なときに、自分で簡単にできる空調管理方法についても知っておいてください。夏の猛暑では、最悪の場合には命に関わるケースもあるので注意が必要です。
カーエアコンを直すときには、一般的な修理代金を知りつつ、納得できる修理場所を選ぶようにしてください。
また、代金が高額なときには、車を買い替えるのもひとつの手です。愛車を売りたいときは、修理の実績と買取に定評があるカーコレクトがおすすめです。